ⓔコラム11-4-15 H. pylori感染の診断と治療のガイドラインによる胃癌予防の提言

 日本ヘリコバクター学会によるH. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016年改訂版では,胃癌の予防に関して,胃癌リスクの違いにより,年代別,胃癌リスク別に合わせた対策の提言がなされている1).すなわち,①リスクの低い青少年期 (18歳未満) では,test and treat,すなわち検査と治療を行う.この年代では,萎縮性胃炎が進行しておらず除菌により胃癌罹患の可能性は非常に乏しくなる.そのためその後のサーベイランスの必要なく胃癌予防ができる可能性を指摘している.②50歳未満の成人におけるいわゆる胃癌低リスク期では,まず内視鏡観察にて,胃萎縮程度,範囲を確認し,どの程度萎縮に伴う胃癌リスクがあるかの確認が必要である.③50歳以上成人におけるいわゆる胃癌高リスク期 では,まず内視鏡観察にて,注意深い胃癌有無の確認が必要であるとしている.さらにH. pylori除菌は70歳以上でも胃癌予防に有効であることを提言として示している.

〔兒玉雅明・村上和成〕

■文献

  1. 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会編:H. pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版,先端医学社,2016.